東本 崇仁 教授

教員紹介

主な担当科目

情報心理学(2年前期),情報心理学応用(2年後期)

専門領域

認知心理学,知識工学,人工知能,知的学習支援システム

研究テーマ

認知心理学に基づく効果的な診断・フィードバックを有する

人工知能技術ベースの知的学習支援システムの開発

研究業績

研究紹介

皆さん,「学習」は好きでしょうか?

好きな人はその理由は何でしょうか?「楽しいから」「新しいことを知ることが好きだから」「成長につながるから」「将来の選択肢が増えるから」などいろいろあると思います.

嫌いな人はその理由は何でしょうか?「よくわからないから」「勉強する意味がないと思うから」こちらもいろいろあると思います.

「学習」を好きになる条件は,「対象に対するモチベーションがあること」と「対象が理解可能であること」との2点です.

本研究室では,「心理学ベースで人のモチベーションを向上させるコンピュータ」,「人と同じように問題解決を行う知能を有するコンピュータ」の開発を目的としています.

研究例その1:誤りの可視化を元にした学習支援システム

間違ったときに「それ間違ってるよ」と指摘されるとやる気がなくなりますよね.これを否定的フィードバックと言います.人は否定されるとやる気がなくなります.

そこで,「それが正しいとするとどうなるか考えてみよう」と促すとやる気が出ます.これを肯定的フィードバックと言います.

誤りの可視化では「学習者の解答が【もし正しいとしたら】どんなおかしなことが起きるか」をコンピュータが「可視化」して表現します.

力学の例です.上の問題では本当は垂直抗力が働いているのですが,重力しか働いていないと思って学習者が解答すると...

「あなたの解答に従うと,物体が地面に沈み込んでしまうことになる」という様子をコンピュータが可視化し,「自ら誤りに気付く」ことを促します.

研究例その2:教える活動を体験させるためのTAME(Teachable Agent Module for Error-visualization)エージェント

学習活動の中で最も効果的なことは「人にモノを教えること」です.

しかし,日常ではちょうど自分が教えるのに適した相手がいることは少ないです.そこで,コンピュータが教えられるエージェントになります.

教えられるエージェントが解いた問題に対して,ユーザは「この解き方がおかしい」などを指摘します.

エージェントは,学習者の行動によって理解を深めます.

研究例そのプログラミングにおける「部品知識の獲得」を支援するための学習支援システム

プログラミングの授業では,if文やfor文などの使い方を覚えてプログラムを作ることが多いです.

しかし,人の問題解決のプロセスでは,「チャンキング」というまとまりとして情報をとらえて一括処理することが一般的で,if文やfor文などのレベルではなく,一定のまとまりのある部品を獲得することがプログラミングスキルの向上に不可欠です.

本研究ではプログラミングにおいて「部品知識」の獲得を支援する研究を行っています.

c=a,a=b,b=cという3行のコードは「Swap」という機能を有する部品知識として獲得します.

さらに,その部品を拡張していくことで,次第に大きなプログラムも作ることができるようになります.

システム画面です.部品を組み合わせて目標となる部品を作ります.目標部品を作り終えると,次はその目標部品を使って,新しく拡張した目標部品を作る課題に移ります.

研究例その4:「他の人のコードの良いところを取り入れる」ためのゲームベースのロボットプログラミング型知識共有プラットフォーム

自分以外の人のプログラムのコードを見ることは良い学習につながるはずです.しかし,実際はそのような機会は少なく,また,他の人のコードがどのように優れているかを理解することも難しいです.

そこで,本研究では自分や他の人のコードを評価し,ランキング形式で表示し,良いところを可視化します.同時にゲーム形式で楽しいです.

ロボットに動作をプログラミングし,作物をできるだけ収穫できるようにします.

収穫数と使用コストに応じてランキングが表示され,他の人のコードの良い点を学べます.

研究例その5:「プログラミングにおける動き方(振る舞い)を理解するため」のトレース演習システム

プログラムについての理解を深めるためには,各行で何が行われているかを理解することが大切です.

そこで,本研究では「どのような順番で行が実行されるか」と「各行で何が行われているか」を学習者に与えるトレース演習課題を提案しました.

さらに,「もし正しいときはどのような結果になるか」も可視化し,学習者自身に誤りに気付かせます.

主な授業の紹介

情報心理学2年前期

 「情報」という言葉を聞くと,「コンピュータ」を連想する人が多いかもしれませんが,本来の「情報」とはもっと広い意味での言葉です.「情報技術(情報通信技術)」が対象としている情報とは,「記号」「音声」「文字」「絵(画像)」など「ある事象に関するデータを抽象化し,意味を持たせたもの」が本来の定義です.たとえば,「ある一定の領域を塗りつぶした黒い鉛筆の跡」はデータであり,その跡が「”あ”という文字である」ことが情報です.本情報心理学では,「人が外部から刺激を受けて,内部処理し,反応するという心理メカニズム」や「人と人がやりとりする際に影響しあうメカニズム」は情報処理や情報通信のメカニズムであると捉え,心理学における情報のやりとりを説明いたします.「情報心理学」では,心理学の基礎的な仕組みについて講義し,その理解を目的とします.

情報心理学応用(2年後期

 前期の「情報心理学」では,心理学の基礎的な仕組みについての講義でしたが,後期の「情報心理学応用」では,人の心の働き(人の中で起きている情報の処理)を解明するために,人に与えられるデータや人から得られるデータの分析方法について講義します.心理学の代表的な研究法の特徴や流れを理解し,実際に課題に取組む学習活動を通して,データの取得・分析、結果の記述に関する基礎的能力の習得を目指します.